マレーシアの人口の70%近くはマレー系であり、その多くがイスラム教徒である以上、企業がハラール認証を取得することは重要な戦略の一つである。
しかし一方でハラール認証取得のハードルは、マレー系国民(プミプトラ)とそれ以外(中華系など)との経済格差是正のためのプミプトラ政策における足枷となっている実態もある。
ハラール認証を取得したメーカーの60%は非ムスリム(Bernama)
- マレーシアのイスラム開発局(JAKIM)によると、ハラール製品メーカーの60%以上が非イスラム教徒が所有する多国籍企業
- ムジャヒド・ユソフ内閣府宗教局大臣は、非イスラム教徒のメーカーがハラール認証の重要性を認識している一方で、多くのプミプトラ起業家が申請しない理由が分からないと指摘
- ハラール認証の取得は、成分的な条件だけでなく、衛生面でも質が担保されている印となるので、国内外両方の競争で優位に立てるので、申請を推奨
ハラール認証条件は緩和されない(Bernama)
- イスラム開発局(JAKIM)は8日、小企業のためにハラール認証条件を緩和しないと表明
- ハラール評議会事務局長シラジュディン・スハイミー氏がコメント
- 「小企業から条件緩和の要求は以前から多い」
- 「代わりに企業と製品の改善に焦点をあて、 関係各局と協力して小規模ビジネスの資金・技術サポートする」
解釈
ムジャヒド・ユソフ内閣府宗教局大臣のコメントがいかに頓珍漢であるかがよく分かる。イスラム教徒である起業家がハラール認証の重要性を認識していないはずがない。実際に多くのイスラム教徒がハラール製品を購入しているからだ。
それでも非ムスリムの多国籍企業がハラール認証を取得しており、それ以外の地元起業家が取得していないのは、明らかに資金面の問題である。
ハラール認証を受けるには、慎重な製品開発や製造工程は勿論、申請コストだってかかる。小企業が以前から認証条件の緩和を要求しているのは、コスト面の問題があるからである。
マレーシアは1970年代からプミプトラ政策(マレー系優遇政策)を採用しているが、ことハラール認証に限っては、その申請のハードルが経済格差の是正とは逆の方向に働いているように見える。
その意味では、将来的には特定企業における条件緩和が議論される可能性はある。しかし、最初の記事で指摘されているように、ハラール認証は宗教的な意味合いだけでなく、衛生面など非ムスリムにとっても重要な条件の担保の証にもなる。
条件を緩和することはブランドイメージの毀損にもなるわけで、慎重な取り扱いが必要であろう。
参考文献
[1]Bernama, “60 percent of producers with halal certs are non Muslims – Mujahid”, 6 Sep 2019
[2]Bernama, “Halal certification conditions will not be relaxed”, 9 Sep 2019