世界中に拠点を置く調査会社The Business Research Companyが2019年5月に公開したレポートに”Gambling Global Market Opportunities And Strategies To 2022″(2022年に向けての国際ギャンブル市場の機会と戦略)がある。
世界のギャンブル市場について、2014-2018年の5年間についての分析と2018-2022年までの予測が行われている。ギャンブル市場セグメントは、カジノ、宝くじ、スポーツ賭博、その他の4つに分類されている。
全27章351ページに渡る大作で3,772ユーロもする高価なレポートだが、販売元から公開されている概要だけでもかなり有益な情報に溢れている。ここでは、その概要を見ていく。
レポート概要
- 2018年の世界ギャンブル市場は約4,493億ドルで、2014年からの年平均成長率(CAGR)は4.1%
- 2022年の予想市場規模は5,654億ドルで、予想CAGRは5.9%
- ギャンブル市場のプラス要因は、(1)経験経済の成長、(2)新興市場の成長、(3)急速な都市化、(4)モバイルギャンブルの成長、(4)女性ギャンブラーの増加
- ギャンブル市場のマイナス要因は、(1)カジノの高い税率、(2)予測不可能な気象条件
- 今後のプラス要因は、(1)ギャンブル合法化、(2)世界的な経済成長、(3)ソーシャルメディア利用の増加、(4)消費者のギャンブル習慣の変化
- 今後のマイナス要因は、(1)政府規制、(2)人口動態の変化
- ギャンブル市場の最大セグメントは「宝くじ」(46.1%:2,073億ドル)
- 「スポーツ賭博」は今後最も急成長が予想されるセグメント(予想CAGR=6.9%)
- どのセグメントも「オフラインギャンブル」(従来のギャンブル)が未だ主流で90%以上のシェア
- どのセグメントでも今後VRギャンブルが急成長すると予想される
- 主要プレーヤーは、China Sports Lottery(中国体育彩票)、China Welfare Lottery(中国福利彩票)、Loterías y Apuestas del Estado(スペイン公営宝くじ)、ラスベガス・サンズ、日本宝くじ、Galaxy Entertainment Group(銀河娯楽)
- ギャンブルはアミューズメント市場の87.9%を占める
- 2022年のオフライン宝くじ市場は481億ドルに達し、中国が230億ドルを占めると予想
- ギャンブル市場全体で採られた戦略は、(1)オンラインギャンブルのセキュリティ対策、(2)モバイルギャンブルへの投資、(3)スマートウォッチのギャンブルアプリ投資、(4)大型スロットマシン、(5)ビッグデータ分析
- 主要プレーヤーが採用した戦略は、(1)新しい宝くじ製品の導入、(2)簡単な決済方法の提供、(3)新興国への拡大など
- 今後注目すべき戦略は、(1)スキルゲームとハイブリッドゲーム、(2)モバイルアプリ、(3)退職者・高齢者、(4)アフィリエイト・マーケティング
補足
近年はオンラインカジノなどギャンブルも多様化しているが、まだまだ従来のオフライン型ギャンブルが主流であり、宝くじが根強い人気であることが分かる。そして、宝くじ人気を牽引するのが中国であり、主要プレーヤーにも中国・香港系の宝くじが多く名を連ねる。
「日本宝くじ」はマーケット的には日本国内で閉じているが、世界的に見れば主要プレーヤーの一つであるということも、日本がギャンブル大国であると言われる所以の一つだろう。
(どうでも良いが、日本宝くじは Japan Takarakuji lotteryと表現されており、致し方ないとは言えKinkakuji Templeの表記のようにモヤモヤする。)
スポーツ賭博の高い成長が予想されるが、これは従来のスポーツ賭博だけでなく、成長著しいeスポーツ分野における賭博も成長していくと考えられる。
大型スロットマシンとは、従来の小さなスロットマシンではなく、IGT社のMEGATOWERのような大型のものを指す。MEGATOWERだと、全長で11フィート(約3.4メートル)あり、55インチのディスプレイが搭載された臨場感を売りにしたものだ。(下図参照)
今後VRギャンブルの成長性が高く、マーケットでも注目されているのは以前にも当サイトで指摘した通りである。
レポートの結論として推奨されている戦略にあるスキルゲームは、以前にも紹介したように、格闘ゲームなど運よりも技術に大きく左右されるようなテレビゲームでギャンブルができるサービスを指す。ハイブリッドゲームは従来のギャンブルゲームとの融合である。
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参考文献
Research And Markets, “Gambling Global Market Opportunities And Strategies To 2022”