要約
- 女性がCEOであるスタートアップの資金調達が難しい事が実験的に確かめられた
- 米国ではスタートアップの36%が女性中心であるものの、ベンチャー投資を受けた起業に一人も女性経営陣がいない企業は85%
- この乖離こそが有望な投資機会を逃している事を示唆する
ユタ大学の研究者は「女性起業家は資金調達に苦労する」と主張しています(Lassonde Entrepreneur Institute)
- ユタ大学ビジネススクールのLyda Bigelowは女性が資金調達する難しい理由を検証した
- 仮想的なIPO目論見書を作成し、その創業者が男性の場合と女性の場合に分けて投資家グループにレビューしてもらう実験を行った
- 他は同一内容に関わらずCEOが女性の場合は否定的な評価が多い
解説
紹介した記事の元の論文では、創業者の名前と性別以外(事業内容や財務諸表など)は一切同じ条件で作成した仮想的なIPO目論見書を作成し、複数の投資家グループにレビューしてもらうという対照実験が行われている。その結果、CEOが女性の場合は有意に否定的な見解が多いという事が分かり、潜在的なバイアスが掛かっているのではないかという結論である。
この論文に対してKSL.comはバブソン大学の研究成果を紹介し、米国のスタートアップのうち36%は女性が経営陣の多数派を占めるようになっているにも関わらず、ベンチャーキャピタルから出資を受けた企業のうち女性がCEOだった割合はたった2.7%、1人以上経営陣に女性がいるという条件ですら15%に過ぎないという調査結果となっている。
この報告は勿論、女性による起業を後押しするような政策面にも役立てられると思うが、筆者が注目したいのは「女性CEOであるが故にバイアスが掛かって見過ごされているビジネスが存在する可能性」である。
システムトレードの発達により、天候や心理状況などによる株式取引などへのバイアスはかなり排除されつつあるが、ベンチャーキャピタルなどは人の手による定性的な分析も多く必要であり、この報告は投資家にとっても意味があるものだと筆者は考えている。
参考文献
KSL.com, “Female entrepreneurs have a harder time securing startup funding, U researcher says”