高層マンションの高層階が人気で高値が付きやすいのはどこの国でも同じである。景色が良く、防犯にも良く、騒音リスクが小さく、文字通り「下を見下ろせる」など沢山の付加価値が存在するからだ。
一方で低層階については、日本と他のアジア諸国では扱いが違うようである。
気になったのはシンガポールを拠点に置くニュースチャンネルChannel NewsAsiaのウェブ版のライフスタイルについてのコラム”Should you live on a high or low floor, based on your personality?” である。
参考:cna lifestyle, “Should you live on a high or low floor, based on your personality?”, 5 Jul 2019
どういう性格の人は高層階に住むべきか、或いは低層階に住むべきかという事について書かれたコラムである。この記事の記者がどういう人かは分からないが、シンガポールを中心にアジア諸国をターゲットにしているので、多くの東南アジアなどの人にとっては違和感の無い記事だろうと思える。
高層階に適した性格には、上記の「防犯」や「見下ろしたい」という事も書かれているが、「部屋でトカゲに遭遇したくない」といったアジアらしい内容も書かれている。(東南アジアでは割とランクの高いホテルでも、低層階であればトカゲやヤモリを部屋で見ることは珍しくない。)
筆者が気になったのは以下の文である。
Remember, too, that having a top or bottom floor unit improves resale value and rentability(高層階もしくは低層階の部屋なら、再販価値や賃貸可能性が向上することも忘れないでください。)
cna lifestyle
高層階が再販に有利なのは当然だが、低層階も同様に価値があると書かれているのだ。日本では多くの場合、マンションの低層階は売れにくい傾向があるので、アジア諸国では真逆ということか。
低層階に向いている人について、以下の5つの特性が書かれている。
- エレベーターを待つ時間が惜しい
- 良い景色よりも広い空間が欲しい
- 都会の環境に適応しているので騒音が気にならない
- 中学校の理科を学習したので(高層階の)暑さを知っている
- 暑さと言えば、火災が発生した時にいち早く逃げたい
記事でも書かれているが、アジア諸国でも低層階よりも高層階の方が価格は高い。その代わり、低層階は少し広めの部屋である傾向があり結果的に価格が高くなることには注意しなければならない。それが2を指している。それを差し引いても、上記の「低層階に適した特性」は、1を除けばいかにも東南アジアらしい。
騒音が気にならない人は日本でも一定数いるが、東南アジアだと交通渋滞が深刻で、またクラクションのマナーもあまり宜しくないことが多いので、半端ない騒音である。それが気にならなければ低層階でも問題ない。寧ろ、慣れている人が多いので、あまり価格を押し下げる要因としては弱いのではないかと考えられる。
そして4の「高層階の暑さ」については、熱帯地域では日本以上にマンションの高層階の暑さは厳しいものになる。義務教育の話を付け加える辺り、教育の格差も垣間見える文章だ。
5の「火災時の逃げやすさ」というのも、火災が多く、消防インフラが不十分なケースが多い東南アジアでは、考慮すべき重要な事項であるのだろう。
本稿ではこれ以上は掘り下げ無いが、実際に階層毎にマンション相場などを比較分析してみると非常に面白そうな話題である。高層階だけでなく低層階も高い理由というのは、この記事で少し分かるだろう。