Global Entrepreneurship Monitor(グローバル・アントレプレナーシップ・モニター:GEM)は、1999年に バブソン大学(米)とロンドンビジネススクール(英)の共同プロジェクトとして始まった国際的な起業家精神についての調査を行う機関である。
49ヶ国300以上の研究機関と500人以上の起業家精神研究者 が協力し、年間20万人以上のインタビューやアンケート調査を通して得られた分析結果を、毎年レポートとして公開し、国連や世界銀行、OECDなどの国際機関でも多く利用されている。
今回から2回に分けて紹介するのは主に最新の2018/2019 Global Reportである。但し、GEMの協力を受けてみずほ情報総研が行った経済産業省委託調査「平成 30 年度創業・起業支援事業 (起業家精神に関する調査) 」 報告書も同じデータが多く使われており、こちらの方が図表が見やすいケースがあるので、適宜こちらも引用する。
なお、今回(1)は調査の枠組みを整理するだけなので、調査結果などは掲載していない。結果だけ読みたい人は(2)に進んでもらいたい。また、参考文献一覧も(2)にまとめて掲載している。
続き:グローバル・アントレプレナーシップ・モニター・レポートから見る起業家精神(2):データを読む
GEMの分析フレームワークは、社会・文化・政治・経済的環境(Social, cultural, political, economic context)の影響を受けながら、起業家活動(Entrepreneurial Actibity)によって付加価値(Entrepreneurial Output)が生まれ、それが最終的に経済的成果(Outcome)になるというものである。
このうち、社会・文化・政治・経済的環境と付加価値と経済的成果は静的な枠組みで、従来の産業構造分析などで使われてきたものだが、GEMの分析フレームワークが着目するのが下図右下の「起業家活動(Entrepreneurial Actibity)」であり、環境と相互作用する動的な分析を目的としている。
起業家活動は主にフェーズ(Phase)・インパクト(Impact)・タイプ(Type)で測る。
フェーズは構想段階や事業初期段階など起業の状態を見るものである。インパクトは成長期待やビジネスの新規性、国際化を測るものである。
タイプは TEA(Total Early-Stage Entrepreneurial Activity)・SEA(Social Entrepreneurial Activity)・EEA( Employee Entrepreneurial Activity)の3つがあるが、 重要なのは全体的な起業家活動を見るTEAである。
ここでのアーリーステージは下図のように、創業3.5年以内の新規ビジネス事業者Owner-Manager of a New Businessに加え、事業化構想段階を含む誕生期の起業家(Nascent Entrepreuner)を併せたものを呼ぶ。日本語では前者を「誕生期」、後者を「乳幼児期」と訳すようだ。
故にベンチャーキャピタルで言うようなアーリーステージとは意味合いが異なる。ベンチャーキャピタルで言う「シードステージ+アーリーステージ」が範囲としては近いだろうか。
構想段階も含めることで、実際に世の中に成果として生まれたものだけでなく、最初期の経済的環境との相互作用や、若くして市場から退出してしまった起業などダイナミックな分析が可能となる。
調査対象国の地域および発達段階の分類については、みずほ総研がまとめたものが見やすいので、そちらを引用する。但し、要素主導型経済・効率主導型経済・イノベーション主導型経済という枠組みは、みずほ情報総研のレポートでの話で、GEMグローバルレポートでの同様の分類は単純に 左からLow-Income・Middle-Income・High-Incomeとしている。
ここまでで特にTEAの定義が重要である。このTEAの割合や傾向を見るのがレポートの主眼となる。
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