ベトナムは胡椒の生産量で世界シェアの1/3以上を占め、胡椒の輸出額の1/2以上を占める。(図はInternational Pepper Community(IPC)による2016年の資料)
そんなベトナムにおいて、5月10日にホーチミンで開催されたOrientation and Action Plan in 2019(オリエンテーションとアクションプラン2019)でVietnam Pepper Association(ベトナム胡椒協会)が発表した内容が以下の記事である。(1メートルトン=1,000トン)
ベトナム胡椒協会は 胡椒の国際価格の回復を期待していない(Vietnam+)
- 2018年における胡椒の世界生産量は55.6メートルトンで2017年から7%増加
- ベトナムは23万メートルトンで世界最大の生産国を維持
- IPCの予測では、世界需要は年率2%ずつ増加しているが、世界供給は8〜10%増加しており、価格低下は避けられない
- ベトナムは2019年も生産量が25万メートルトン、輸出量が23.5万メートルトンと世界市場を牽引する見込み
- 明らかに供給過剰であり、現在の状態で価格を引き上げるには栽培地域を減少させるしかない(それは農家の経済的に無理)
- 衛生・安全基準の遵守、有機栽培の導入で高品質化を図ったり、企業と農家が連携して最新の加工技術を導入したりして、製品の多様化と高付加価値化を目指すべき
補足
下図は日本における胡椒価格の推移だが、2013~2015年にかけて大きく上昇し、その後低下し続けている傾向が分かる。
価格上昇の理由としては東洋経済新報社の大崎氏によると、リーマンショック回復期の「新興国の経済成長に伴う肉消費の増大」と「即席麺の世界的なブーム」による胡椒需要の増加が大きいという。
一方で、胡椒は植付から収穫まで3~4年かかる。Nikkei Asian Reviewによると、価格上昇した時期にベトナム・マレーシア・インドネシアなどで天然ゴムやキャッサバを胡椒に植え替えた農家が多発したという。
ここ2~3年は胡椒価格が高騰していた時期に植えた胡椒が収穫できるようになり、結果的に供給過剰を招き、現在の価格低下を招いているという。
実際、ベトナムの胡椒生産量を見てみると、2017年から急上昇している。2014年の高騰時に植付け、早いもので3年で収穫できるという事でうまく説明できる。
これらのデータや分析を見れば、しばらくは軟調な価格が続きそうに見えるが、農家がこれだけ機動的に作物を変えられるとなると、数年単位で見れば価格が上昇に転じる可能性もあるかもしれない。
参考文献
Vietnam+, “Vietnam Pepper Association not hopeful of global price recovery”, 13 May 2019
International Pepper Community
東洋経済オンライン「1年で7割高、コショウ価格上昇のワケ」2014年9月13日