日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施しているG検定対策の公式テキストである。G検定を受けた事が無いが、仕事に関連して貰ったので紹介する。
浅川伸一ら(2018)「 深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト) 公式テキスト」翔泳社
日本ディープラーニング協会は、メディアでも比較的露出が多い東京大学大学院工学系研究科教授である松尾豊氏が 2017年に設立した新しい協会である。人工知能を使った日本の産業競争力発展とそのための人材育成を目的としている。
ディープラーニングの基礎知識についてのG(ジェネラル)検定と、エンジニアとしての力を測るE(エンジニア)検定があり、本書はG検定のための公式対策テキストである。(E検定受験には公式講座の受講が必要となる。)
まだ検定の問題自体が手探り状態であるのか、公式テキストでありながら「本の内容から問題が出ない」といった辛辣なAmazonレビューが非常に多く、「G検定に合格しました。」(星5つ)という好意的なレビューでも、
出題された問題数では、この書籍でおおよそ5割ぐらいは網羅してると思います。
Amazonカスタマーレビュー
なのでこの本に載ってる重要語句は必ず覚えた方がいいです。
と「5割かよ」とツッコミを入れたくなる。
前置きは長くなったが、ここではあくまでも「人工知能の基本を学ぶ上でのテキストの有用性」についてのみレビューを行う。
結論から言えば「辞書的な用途としては有用」というのが読後の感想である。筆者は普段から人工知能開発に携わっているので、出てくる用語や技術についてスラスラと読んでいけるが、恐らく全く当該分野について知識の無い人には、技術面を簡単に説明していく4章以降はイメージがわかないのではないかという印象である。
特に、ディープラーニングを一躍有名にしたAlexNetから比較的新しい物体認識Mask R-CNNまでをわずか10ページでまとめているのは驚くべき詰め込みようである。
逆に、人工知能の定義や歴史など3章までの内容は非常によくまとまっている。特に定義面では偏った論説が多く見られる中、偏り無くバランスよく論じられている印象だ。
章末についた練習問題を見れば、広く浅く知識を問うような問題であることが多い。テキスト自体の構成がそのままなのであるが、歴史から代表的な技術の大雑把な説明、用途から倫理・法律面まで幅広い内容が取り上げられている。
今後検定として成長していくかは未知数だが、うまくいけば日経TESTと同じようなポジションが得られるのではないかと思われる。日経TESTは日本経済新聞社が実施している検定試験で、経済や社会に関する時事問題や一般常識を問うもので、簡単ではあるが意外に大手企業の昇進要件に含まれている試験である。
恐らくG検定も、それを知っていたからと言って人工知能の世界を広く大雑把に知ったに過ぎないが、逆に言えば今後最低限は知っておかなければならない知識であるように思える。
但し、何度も言うがレビューを見る限りでは、これを読んだからと言って検定に通るとは限らない。それでも、広く浅くまとめられた資料・辞書・用語集としては有用だろう。
浅川伸一ら(2018)「 深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト) 公式テキスト」翔泳社