多くの国で移動体通信事業者(MNO)は3社による寡占

ワールド・ワイド・ウェブ財団が主宰するAlliance for Affordable Internet (A4AI)は先月、2019 Affordability Reportを公開した。このレポートは、中低所得国の人が手頃な価格でインターネットにアクセスできるようにするための政策の進捗状況を分析するものである。2019年版では、モバイルブロードバンド市場における市場競争の欠如が指摘されている。

A4AIはワールド・ワイド・ウェブ財団を事務局とし、GoogleやMicrosoft、Intelといった大手IT企業をはじめとして、国際開発省やアメリカ合衆国国際開発庁など多くの機関も加盟する団体である。A4AIは、ユネスコが設立した「持続可能な開発のためのブロードバンド委員会」(2015年まではデジタル開発のためのブロードバンド委員会)が定める「1人当たり平均所得の5%未満」でブロードバンドインターネットにアクセスできることをAffordable(手頃な価格)としている。

レポートで明らかにされた後発発展途上国での独占状態がモバイルインターネット価格を高止まりさせているという発見も興味深いが、筆者はそれ以上に、「国ごとの主要な移動体通信事業者(MNO)の数」を示す下図が興味深かった。(元データ自体はMNOの業界団体GSMAのものである。)

国ごとの主要な移動体通信事業者(MNO)の数
出典:A4AI

日本を始め、大多数の国で主要なMNOは3社(緑色)による寡占だということである。欧州や南米の一部、マレーシアでは4社(青色)というケースもあるが、多くの国では3社で均衡しているというのが非常に興味深い。

どのような過程で3社に均衡する傾向があるのかはレポートだけでは分からないが、そこに楽天モバイルが加わろうとしていることには色んな意味で興味深い。

しかし、4社になると市場競争が更に良好に働く可能性は高い。A4AIは、ブロードバンドインターネットの価格やサービスなどを総合的に評価したAffordability Drivers Index(ADI)を公開している。以下は、ADI(横軸)と通信容量1GBで平均月収の何%を占めるか(縦軸)をプロットしたものであるが、4社(青色)の国では一部例外を除いて総じてADIは高めであることが分かる。

さて、レポートの主眼としては3社に満たない国の話であり、最初の世界地図を見て分かる通り、アフリカ諸国を中心に1社(紫色)による独占や2社(橙色)による寡占が目立つことが分かる。中東や東南アジアでも経済の成熟度が低い国では主要なMNOの数が少ない傾向が見られる。

A4AIの分析によると、MNPなども含めて市場競争が働いている国では1GB当たりの価格やサービス品質など総合的に見て高いパフォーマンスを示す傾向が見られるが、独占状態もしくは独占に近い国では高い金額を支払わざるをえない状態である。

主要なMNO事業者が1社の国では、2社に増えることで1GB当たりの通信量が7.33ドル下落する見込みがあると予測されている。(教育や人口、収入などの影響をなくした場合)

実際、MNOが独占状態のアフリカ諸国では、1GB当たりのモバイル通信量が平均所得の7.1%に達しており、こうした値段の高さが「世界の半分がインターネットにアクセスできない状況」を招いている。

参考文献:A4AI, “2019 Affordability Report”

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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