採用面接において多くの面接においては簡潔で分かりやすく質問に答えることを良しとする採用担当者は多いだろう。しかし、「あなた自身について語ってください」という曖昧な質問に対しては「1分以上と長いほうが良い」と指摘するのがパーソナルブランディングコンサルタントであるジョセフ・リュー氏である。
一部のキャリア専門家は、この種の質問には30秒~1分の回答が望ましいとしている。しかし、1分以上の回答(できれば3分以上)が良いという意見を少なからず存在する。
例えば、Toptal社の最高総務責任者ブレンダ・クルツ氏の「1分以内の回答では採用候補者の経験の深さを理解することが難しい」と述べ、Zety社の共同設立者ペイト・ソスノフスキ氏の「答えが短すぎれば、面接者は単に印象に残らないか、もしくは言うことが無いと思う」と述べている。
リュー氏は、この種の質問に長い回答時間を確保すれば、1分以内の回答では得られない4つのメリットがあると指摘する。
まず第一に、履歴書以上の有用な情報を得られるという点である。
この種の質問はそもそも、専門的なスキルや成果が自社とマッチするかを確認するために行われるものである。専門的なことを話すのであれば、1分以内ではどうしても限界がある。
第二に、今のキャリアを決めるにいたった動機を聞ける可能性が高いという点だ。短い時間で「あなたについて」の回答を求めても、恐らくスキルや経験などに絞って話されるだろう。
1分以内だと、第一の点でも時間が不十分かもしれないのに、それ以外のバックグラウンドについて情報を得られる可能性は低い。
第三に、採用担当者が面接相手を思い出す上で重要という点だ。
本来は面接に先立ち、履歴書を徹底的に読んで質問を洗い出すのが理想である。しかし、米国では平均して採用担当者は1枚の履歴書を7秒しか見ないというデータがある。
ある程度長い時間話してもらうことで、明確に面接相手のことが分かるし、その後の質問にも結びつけやすい。これは面接を受ける側にとってもアピールするチャンスということである。
第四に、長く話せるということは、それだけ話せる材料を持っているということを意味し、また面接を受ける側にとっては目立つチャンスということである。
曖昧な質問に対して、話す材料がなければダラダラと無内容なことを話すことにつながりやすい。そうではなく、しっかりと内容のあることを長く話せるのであれば、それだけ候補者の知識や経験を深く知れる可能性がある。
以上の4点は、簡潔な答えを期待しがちな採用担当者が場合によっては長い回答を期待することの重要性を示唆するものである。
また、面接を受ける側にとっても参考になるかもしれない。但し、面接者が「簡潔に話してください」と言っている場合は、この限りではない。
参考文献:Fast Company, “Why longer responses to “So, tell me about yourself” are better”, 8 Sep 2019