2014年頃に猛威を奮ったデング熱だが、今年2019年は再び東南アジアで拡がっている。
タイでは4ヶ月で患者数は18,105人で前年同期比で2倍以上であり、24人が死亡している。
特に蔓延しているのがシンガポールで、今年は3,455人の症例が報告されており、既に2017年の2,772人、2018人の3,285人と年間の患者数を超えている。
また、ベトナムのダナンでも今年は2,250人の症例が報告されており、前年同期比で2.5倍にも達している。他、インドネシアなど東南アジアの各地で爆発的な流行或いはその可能性が指摘されている。
デング熱は重症化しても適切に治療すれば、死亡率は1%未満に抑えられるとされているが、免疫力が低い高齢者などの死亡率は比較的高い。シンガポールでは今年は3人が死亡しているが全て70歳以上の高齢者である。
1%未満というのは重症化したケースである「デング出血熱」の場合である。タイで死亡例が多いのは、貧困者など適切な医療を受けられなかったケースが多いと考えられるが、それ以外に「二度目の感染が重症化しやすい」という傾向があると言われる。
今後更にデング熱が流行する可能性があると言われるのは、本来はこの時期はまだ流行しにくいからである。
岡本(2015)は、東南アジア・南アジア地域におけるデング熱と降水量のパターンを分析している。以下は、2001~2010年の各国におけるデング熱の月別発症例数(ピンク色)と降水量(青色)を図示したものである。
一般的にデング熱を媒介する蚊は水溜りなどが多い雨季の方が発症例が多いと見られていたが、実態はややずれがある。タイなどが顕著だが、非常に降水量が多い3~5月よりも、その後の6月にデング熱の流行にピークがきている。
今年の発症例が多い理由は、スモッグの問題などでも指摘したが、少ない降水量が続いていたことにより、4月までの時期の降水量が例年よりも少なく、蚊が繁殖しやすい環境にあったのではないかと考えられる。
例えばタイは地域にもよるが10月頃まで雨季が続くと予想されるので、更に感染者数が大幅に増加する可能性があると見られる。
また、素人目線であるが、今年は東南アジアでは連日の猛暑が報道されている。これはタイ人の主観にも多く現れているようで、例えばタイ語でร้อนจัด(猛暑)をGoogle Trendで検索すると、現在の検索統計の収集方法に変わった2016年以降において、今年の暑気(3~4月あたり)は特に暑さが厳しかったようである。
なお、気温の統計やニュースの統計を出さないのはGoogle Trendの活用例の一つを挙げるためである。決して執筆時間の問題ではない。
参考文献
岡本嘉六(2015)「東南アジアにおけるデング熱発生の季節要因」
newsclip「タイのデング熱、4カ月で1.8万人 24人死亡」2019年5月5日
Channel NewsAsia, “Number of dengue cases in 2019 surpasses last year’s total count”, 17 May 2019
The Voice of Vietnam, “Vietnam sees steep increase in cases of dengue fever”, 17 May 2019