要約
- 昨年からシンガポールとマレーシアは外交問題が再燃している
- シンガポール人がジョホール州でテロ支援をしたことで外国投資規制が検討されている
- ビジネス環境が良いマレーシアの今後を見る上で注視が必要
シンガポール当局はマレーシア人ISIS戦闘員への資金提供の容疑者を拘束(Al Arabiya)
- マレーシアのジョホール州でシンガポール人2人を、ISIS戦闘員に資金援助した容疑で逮捕
- 2018年12月に逮捕され、シンガポールに強制送還され、内部安全保障法のもとで拘束
- 内務省は、2013年末にシリアから戦闘員が帰国した時から資金援助したと説明
ジョホール州はシンガポールの過激派の逮捕に続いて外国人実業家に新たな規制を課すかもしれない(The Straits Times)
- 逮捕されたシンガポール人は2人ともジョホールバルで事業を営む実業家
- 州統括委員会委員によると、ジョホール州政府は同州で事業を開始したい外国人に新しい規制を課すべきか警察に助言を求めている
- 「本物の」外国人投資家への誘引と安全保障のバランスを取る解決策が求められる
解説
マレーシアのジョホール州はシンガポールと隣接する地域で、経済上の結びつきも強い。物価の差を利用してシンガポールに近いジョホールバルに住み、シンガポールに通勤する労働者も多く、日本からの移住先としても人気で、教育機関も多い。
マレーシア側も外国投資を集めるために積極的にビジネス環境を良いものにしており、開発を進めている。1MDBで問題となったマレーシアのイスラム金融センターの建設地もジョホール州だ。
その両国の外交関係の問題が再燃している。2018年10月にマレーシア当局がジョホール港の境界線をシンガポール側に広げ、シンガポールも対抗してトゥアス港の境界線をシンガポール領海際まで広げた。
その結果、両方の港の境界が隣接する状態になって航行の安全に問題が生じ、先日2月9日、トゥアス沖合に停泊していたマレーシア政府機関の船舶に、ギリシャの貨物船が接触するという事故があった。(AsiaX)
クアラルンプール・シンガポール高速鉄道(HSR)の建設中止も外交問題になりかけたが、今度はジョホール州で事業を営むシンガポール人がISISの戦闘員に資金提供をしていた事で、今度は現在の外国人による事業の規制を強化する可能性が出てきたのが一連の流れだ。
マレーシアは積極的な投資奨励策を進めてきており、世界銀行のDoing Business 2019のビジネス環境ランキングでも、昨年の24位から15位に大きく上昇するなど、その取組みが評価されているが、今後の規制によっては投資熱を緩めてしまいかねないので注視が必要だ。
参考文献
AsiaX「トゥアス沖合でマレーシアとギリシャの船舶が接触」
Al Arabiya, “Singapore detains alleged sponsor of Malaysian ISIS fighter”